私自身、様々な必要性から凡そ2年に一度程、新規事業の立ち上げを全力で取り組まざるを得ないタイミングがある。それがまさに今である。
新規事業とは実に不確実であり、大変なものなので避けて通れるのであれば避けたい所であるが、そうも行かない状況に2年に一度くらいはなってしまう。
どうせやるなら、成功させようということで100日程全力で取り組むと過去実績としてはほとんどなんとかなったというのが経験則的なサイクルである。
さて、改めて新規事業を成功させるためには何を意識するとよいだろうか?
私の考えでは新規事業を成功させるために重要な要素は5つである。むしろこれだけでよい。XX分析などは私自身は実務上ほとんど考えたことすらない(自然と考えが溶け込んでいるとも言えるが)。それらが救いになるのならば、どれほどありがたいことか、と思うが、実態は残念ながらそうではない。
新規事業が成功する流れ
早速その答えであるが、以下が凡その流れである。最も重要なのは「改善サイクル」の量とスピードである。この活動に9割以上の時間を投入するべきだ。むしろここではなく、「調査」や「社内説明」に時間を使っているなら相当高い確率で失敗する。
- 事業機会を発見する
- 競合・先行者を熟知する
- 商品アイデアを考案する
- 顧客にアイデアをぶつけ改善サイクルを働かせる
- 突破口が見えたなら特定アイデアに集中し、他を捨てる
順番に簡単に説明しよう。
事業機会を発見する
「金の匂いを感じる」と呼ばれるものである。ビジネスセンスと表現されることもある。
事業機会と言うと分かりづらいが、要は5-10年後を想像し上昇する需要に対して供給が少ない場所を狙いましょう、と言っているだけである。
ほとんどの会社は未来予測的には動かず、短期の日和見的な挙動を示す。中長期を想像し、投入リソースをコントロールしながら一貫して目標を追求していけば高い確率で事業は成功させられる。
ちなみに「市場参入が早すぎた」というのは「先見性にあふれる」という意味にはならず「現実を感じるセンスに乏しい」ということなので誇るようなものではないことに注意である。
競合・先行者を熟知する
「これが儲かりそうだな」と思ったなら真っ先にやることは競合・先行者商品の利用である。先行者の方がはるかに自分よりも物事を知っている。その先輩方に教えていただこうということだ。しかもほとんど無料で。
これをしない理由はなにもない。迷わずあらゆる手段を用いて競合・先行者サービスを利用するべきである。「あらゆる手段を用いて」とは、簡単には購入出来ないBtoBサービスであってもなんとかその実態を理解する努力をするべきである、という意味だ。自社での利用が難しい可能性があるなら、既に使っている会社に話を聞けばよい。そしてこれはそれほど難しいことではない。
商品アイデアを考案する
数多くのアイデアを考案しよう。ややこしく考える必要はない。先行者らが行っているものに自社なりのアレンジを加えればよいだけだ。
「画期的なアイデア」は基本避けよう。顧客の習慣に合っていない。メディアは喜んでくれるかもしれないが、習慣にハマりづらいものというのはユーザーにとってありがたくない。
習慣を変えようというのは相当長期及び大規模な投資を覚悟しない限り追求しないほうがよい。
「市場を啓蒙する」という発想も同様である。
市場は1社などに啓蒙されるのではなく、はじめからその需要を持っている。顧客らから内発的に浮かび上がる需要にアイデアを当てる発想が基本だ。
「自分が啓蒙すれば需要が盛り上がる」というのは楽観的な考えである。
基本的に事業戦略の基本はトレンドフォローである。逆張りの成功率は高くないが、アイデンティティの都合からなのか、トレンドフォローを無視し、逆張りをする人々は絶えない。
もし望むものが事業の成功ではなく、逆張りによるアイデンティティの確率や個人のメディア上におけるプロモーションであるなら、逆張りもよいだろう。
ちなみに、アイデアとは顧客に理解出来る単純な言葉で表現された
- 商品案
- 期待効果
- 競合との比較優位
を指している。顧客に理解出来ない高尚なコンセプトはアイデアとは言えない。
顧客自身の購買活動は比較的シンプルである。自分自身や自社も大量のモノ・サービスを購入していると思うが、その中で製造方法・裏側にある会社の想いなど知っているものはどの程度あるだろうか?
購買心理を紐解きたければ、自分自身を見つめるとよいだろう。
顧客にアイデアをぶつけ改善サイクルを働かせる
これが活動の9割以上を占めるようにしよう。ひたすらにアポを取って、提案し、断られ、改善し、を繰り返す。
事業リーダーが保証出来るのはこの数とスピード程度だろう。
誰かをリーダーにアサインするのであれば、アイデアの改善スピード・顧客フィードバックを受け取る回数が多い人をアサインするべきだ。
当初の想定は間違っていても全く構わない(あたっているに越したことはないが)。このサイクル中に修正出来るはずだからである。当初想定を外していたことは事業が失敗する言い訳に出来ない。
このサイクル中では極めて柔軟な修正を前提とするべきだ。自分自身も「自分が如何に間違っているか」については織り込んで動く必要がある。周囲も同様である。
「当初掲げたコンセプトと今の方針は違うではないか」というのは批判する理由にならない。
唯一否定されるべきは「アイデアの改善速度と量が足りないではないか」だけである。
このプロセスは混沌としたプロセスである。データやロジック、というのは相当に頼りない。
1アポだけの打球感から、迅速に戦略を修正する必要がある。
ここで「Nはどの程度であれば十分なのか」などの疑問が湧くと思うが、新規事業と決定木的な論法は極めて相性が悪いと思って構わない。
Pという状況でXであればA→Qという状況でYであればB→….という決定木的な考えは「分かりやすい」と思うが実態と即していないのでこの考えに救いを求めると失敗に導かれる。
Xであれば撤退、NはP人であれば十分などの形式的な要件を求めるならば新規事業リーダーとしては不適格である。
外部から与えられる形式的な判断基準ではなく、直感による判断を磨くには経験と知識が必要である(カーネマン曰く)。形式的な基準を求めるのではなく、成功・失敗事例を大量に知り、そして自分も成功・失敗を大量に経験することが良い判断をする近道である。まやかしの判断基準に頼らないようにしよう。
突破口に集中する
つらい、つらいアポを繰り返していると、ふと顧客側からすごく歓迎されるタイミングがある。
今までは押しても押しても進まなかったが、引き込まれるようなタイミングがある。
これを見つけたら他の活動を一切停止し、全力でこの機会に集中し捉えきる。
ここで「いや、他も検討したい」などと言っていては幸運を永遠に掴めない。
局所的最大解であっても全く構わない。新規事業においては解、すなわち「売れる」ということが何よりも希少である。機会を選ぶ贅沢などありはしないのだ。
まとめ
- 決定木を信じず、直感を磨く。直感を磨くには知識と経験
- 新規事業の活動はシンプルにする。アポの取得と改善に9割以上の時間を使う
- 機会が来たら集中し、捉えきる。「本来やりたいこと」のように自分の都合を押し付けようとしない。(顧客の考えを変えるより、自分の考えを変えた方が遥かに容易だ)

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