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  • SaaSの死・その先にある3つのモデル

    SaaSの死・その先にある3つのモデル

    2026年は「SaaSの死」というキーワードが特に話題となった。

    SaaS関係銘柄の下落は顕著であり、市場は少なくとも非常に高いバリュエーションを許容しなくなっているようだ。伝統的なSaaSビジネスという考えを根本的に変えていくことを考えるには良いタイミングだろう。

    SIらもこの10年程は「サービス型ビジネス」への移行を標榜してきた。SaaS型を目指したような側面もあっただろう。

    ただその前提条件も大きく変わりつつある。

    それではSI・SaaSというソフトウェアカンパニーであった会社らはどういった方針を取ることが出来るのだろうか?本稿ではこのテーマを考えていきたい。

    SaaSに対する3つの脅威

    そもそも何故「SaaSの死」と言われる状況になっているのか考えてみよう。

    1.過渡競争

    SaaS企業にとっての危機は何も生成AIのみによるものではない。2017-2021年頃、私は元々SaaS型のビジネスをカスタマーサポート領域で行っていた。当時からの課題は競争の激しさである。Salesforceが生んだThe modelであったり、LTV/CACなどのメトリクスであったりSaaSというビジネスのプレイブックは時間が経過する毎に増えていった。

    そうするとSaaS企業間の競争は非常に激しくなる。全員が似たような考え方をし、プロダクトを作る。”MVP”,”Product market fit”などの考えも流行した。TVCM・タクシー広告出稿をする企業も増えた、

    激しい競争によりCAC(顧客獲得コスト)は急騰する。

    現場で現れる状況としては、営業が極めて有能でないと売れない、アポ獲得のための広告コストが高騰する、という状況である。

    単純なツールを売るためにも、1アポあたり7万円等を払うような状況であった。決済者アポとなるとより高額である例も珍しくない。

    当時は株価の評価でPSRも用いられることがあった。期待過剰であったことがよく感じられる。利益は出ていなくても成長さえしていれば許容された。

    雨後の筍のようにSaaS企業は生まれ、激しい営業・マーケティングを行うと顧客側にもSaaS導入疲れが現れる。同時にSaaS導入にかかるコスト・工数、それがもたらす効果も顧客は学習していった。ニッチなツールになればなるほど、導入の割に合わなくなる。

    このような時代が10年も続けば顧客側もお腹いっぱいである。「もう新しいツールは導入したくない」という顧客も増加した。

    このような過渡競争により、生成AIの以前から多くの企業にとって簡単には利益を生みづらい状況が当初からあった。

    技術的な差異はほとんどの会社が持っていないため、ひたすらマーケティングコストが上がっていったのだ。

     2. 顧客側で出来ることの増加

    顧客側の学習、ローコード・ノーコードツールの発達によってわざわざ”SaaS”と定義された特化型業務ツールを導入せずとも顧客自身が出来ることが増加していった。

    生成AIの登場により、このトレンドは更に加速している。

    社内で作ったものであれば自分らのワークフローに対するカスタマイズも容易である。SaaS企業が定めたワークフローに自分らのワークフローを変更していくという非常に大きなコストも払う必要もない。(ワークフローの変更は極めて大きいコストだ!)

    一定程度の人材を確保出来る企業にとっては外部ツールを導入し続けるよりも自分らで出来る幅を拡張していくほうが妥当な方針となっていった。

    3.Big techの進化

    会計や法務など連日OpenAIやClaudeから従来は特化型のソフトウェアカンパニーが行っていたようなツールがリリースされている。このトレンドは更に加速するだろう。

    Big techは強烈な規模を持っているため性能のみならず、価格競争力も非常に強いことが想定される。

    業界毎のローカルな習慣、規制に守られていた人事・会計・法務ツールは若干の参入障壁を持ちつつも「ここまではbig techは出来ないから安心」と言えるツールは多くないだろう。

     

    AI時代にソフトウェアカンパニーが取れる3つのビジネスモデル

    「特定の業務課題を発見し、MVPを作成し、改善し、PMFし、LTV/CACバランスを取り、The Modelで…」という古典的なSaaSプレイブックを見つめ直すべきではないだろうか。

    「管理画面、ワークフロー、簡易データベースの集合を売る」という考え方自体を考え直す必要があると感じる。

    私が取り組んでいるモデルとしては3つ存在する。

    1. 企業が自社でワークフローを組むためのツール群提供及びコンサルティング
    2. サービス自体(BPO・清掃等)を事業とする。新ワークフローを設計し、内部を極限まで効率化・高速化する。
    3. コアテクノロジーの提供(図面解析等)

    それぞれ簡単に説明しよう。

    企業が自社でワークフローを再設計

    「非ITカンパニーが自分らでワークフローを組み換えていくための支援をしよう」というのがこのモデルである。AIエージェントなどを導入していくためにもデータ基盤、エージェントツールの導入、セキュリティの対応などをしなくてはならない。

    これを全て自社でやり抜くのはかなりの経験を必要とする。

    これを支援するための黒子ビジネスをやりましょう、ということである。

    このようなツールを開発して提供することも出来るし、ツールを導入していくことも出来る。「

    導入」と言ってもワークフローに合わせてITシステムを作っていくのは基本的に顧客の役割としていく。実務的には、顧客内に常駐する人間を派遣し、その人間が顧客に合わせたツールを作っていくというビジネスも増加するだろう。

    顧客側がツールに詳しくなるまではこの派遣業でも相応のマージンを期待出来る。(そしてこの期間は結構長い)

    サービス自体の提供

    「AIで業務効率化出来ますよ。このツールどうですか?」と売り込むより、もし自信があるならその業務自体やってしまえばよい、という発想である。

    ツール導入というのはそもそも非常に面倒である。顧客はそんな面倒なことはなるべく避けたい。

    ベンダー側としても新たな技術の説明をし、説得し、学習してもらい・・・というのは避けたい所だろう。

    顧客自身が元々アウトソースしている業務(清掃等)を狙い、新たなベンダーとして参入するのである。その新たなベンダーは顧客に対しては「低コスト・高速納品」などの価値を訴求し、内部でAIを思う存分使えば良い。

    ポイントとしては顧客の業務習慣を変えないことだ。日常的にアウトソースしている業務の新たなベンダーとして売り込む。顧客側は大きく習慣を変えることなく、その価値を享受出来る。

    勿論これを行うためにはサービス自体に対する深い知見を要求される。これはパートナーシップやM&Aを通じ獲得していくと効率的だろう。

    コアテクノロジーの提供

    「顧客が出来ることが増えた」「Big techが出来ることが出来た」といっても勿論全部ではない。業務で使える水準までテクノロジーを磨く必要がある物も多い。

    最近では特に図面解析、音声解析は非常に面白いと感じることが多い。このような急所となる技術を研究開発し、提供するというものである。

    勿論Open AIのAPIなどをただラップした程度のものには何ら競争力はない。そのような技術のことを言及しているのではない。

    計算資源確保による差別化

    Nvidiaのパートナーシップを見ているとハードウェア系のみならずソフトウェア(ServiceNow)とも組んでいる。

    株価だけ見ると「SaaSの死」であるが、売上・利益ともに好調である。

    AIエージェント提供企業(1)やコアテクノロジー提供企業(3)も今後増加し、競争は激化する。

    その際に、そもそもAIを動かす計算資源を適正なコストで確保出来なければ持続的な優位性を持てない。

    そうなると計算資源を提供出来る企業らとソフトウェア企業らとのパートナーシップは今後増加する。

    ソフトウェア企業としては膨大な計算を適正コストで実現する構造を作らなければ競争からふるい落とされる。

    まとめ

    「管理画面・データベース・ワークフローを業務に合わせて組んで多額のマーケティングコストを投入し売る」という特にVertical SaaSに見られがちな古典的な考え方を見つめ直すタイミングではないだろうか。

    2026年前半は特に半導体・DC関係の企業が活況となったが最終的にAIは学習されたものをビジネスで継続的に利用するフェーズへと移行していく。そのような状況で栄えるビジネスの開発に今から取り組んでいくべきだろう。

     

    メルマガ版

    メルマガ版では本稿に対し、更に私の本音を追記した。本ブログ公開後、5/18に配信をする予定なのでそれも読んでみたいな、という方は是非メルマガに登録して欲しい!

  • 戦略とはネットワークである

    戦略とはネットワークである

    機械学習のアルゴリズムを作っていると、

    「戦略とはニューラルネットワークが作られていく過程と実に似ているな」

    とよく思う

    基盤となるモデルがあり、データを放り込み、学習がなされ、最終的には上手く行くパラメタ群になっていく。

    結果的に成功しているアルゴリズムのパラメタを取り出して個別の数値を見てもよくわからないのだが、全体としては上手く機能している。

    戦略が作られ、実地での学習を経て最終的に当初は予期はしていなかったが成功する。解剖して個別の要素を見てもよくわからない、というのは戦略論を彷彿させる。

    また、楠木建先生の「ストーリーとしての競争戦略」を読み直しながらインスパイアされたという点からも着想を得ている。

    本日は「戦略とはネットワークである」というアイデアとその実務的な創出過程について説明したい。

    戦略ネットワークって何?

    個別のアセット・要素がネットワークを形成し、最終的に「戦略目標」を達成するという様を図示すると上のようになる。

    その中では「他社はリスクが高い・成功しないと思っているからやらないが、自分は成功すると知っている・思っている」というピーター・ティールが言う「大切な真実」が含まれている。

    「ストーリーとしての競争戦略」中で引用されていた【「バカな」と「なるほど」】という書籍の言葉で表現するなら、他社が「バカな」、と言う内容が「大切な真実」というものだ。同質化を防ぐため戦略は少々の逆張りが必要だ。

    逆張りが多すぎると、リスク過剰で全体が機能しない。1つ2つの逆張りを配合し秘伝のレシピを作る、というのが実務的に機能するものとなる。

    よくよく思えば料理にも似ている。基礎を無視すればただのまずいカレーにかならないが、全く教科書的なレシピでカレーを作っても面白みがない、わざわざ店に来る理由にならない。少々の逆張りがよいのだ。

    上のように見ると意味がわからないが、単純な具体例を挙げるとすれば以下のようになる。

    戦略目標としては「Xという商材を売ること」。

    リード獲得は展示会、リスティング広告、検索流入で主に実現する。営業は15分ヒアリングを実施した後、有望であればクローザーが直接説明をする。

    ここで「大切な真実」がある。他社はまだ「Yという技術は実用的水準にあると思っていないが、実は特定用途では既に機能する」ということに気づいていない。

    そうであればYという技術を活用しセグメント特化戦をやれば非常に勝ちやすい、ということだ。

    この中ではリード獲得部隊、営業部隊、商品開発部隊等の要素が登場する。

    リード獲得部隊と営業部隊の関係性は固有なものであり、類似のものは他社でもあれど、全く同じものは世の中にはない。これの集合たるネットワークはより固有になる。

    このように個別の要素(ノード)が他のノードと固有な関係性(リンク)を形成した固有な塊のことをネットワークと呼ぶ。

    会社の「強み」って何?

    これは私の書籍である「インサイト中心の成長戦略」にも書いたのだが、会社の強み、すなわち独自性とはネットワークである。

    個別の要素に注目すると一見分かりやすく見える。

    「この技術が強い」「特許を持っている」「営業が強い」

    ただ個別の要素はコピー出来る。個別の要素だけでは持続的な優位性を形成しない。

    特許についてはよく聞かれるのだが、多くの要素と組み合わせることで間違いなく強い防壁の1つとして機能する。

    一方で「この特許を活かした新製品を作ろうという検討をしています」というプロジェクトはほぼ失敗する。これは個別の要素が持っている価値を過大評価し、実質的な競争力となるネットワーク全体を見ることが出来ていないからだ。

    困ったことに、このネットワークが持つ競争力というのは言語で端的に表現不能である。この説明不能性もニューラルネットアルゴリズムを彷彿させる。

    IRや企業分析では端的に「この会社の強み」を述べることが求められるのだが、過度な単純化をしてしまうことが常である。実際その会社が儲かっている理由は独自のネットワークを形成していることにある。

    自らが経営者であるならばこの複雑かつな巨大なネットワークを体感出来ていないと自社が出来ること/出来ないことの境界線を捉えることはできないだろう。

    戦略ネットワークはどう構築される?

    さて、ここからが問題だ。成功しているネットワークを見て、結果論的に「このネットワークは機能している。特に重要なのはこのノードとこのノードであり…」と解説をすることは出来る。

    問題はその複雑なネットワークをどう構築していくかということである。

    これはなにせ難しい。そもそも自社が活用出来る要素は何があるのか、それぞれの要素はどの程度機能するのか、個別の要素を結節させた際にはどのようなリンクが形成されるのか、それらを組み合わせ限定された資金と時間内で戦略目標達成に寄与させることが出来るのか。

    上を考えただけでも巨大な不確実性を持ち、計算で「確率」たるものすら算出出来ないということはよく分かるだろう。

    超単純化したモデルにトライしてみよう。

    事業に活用出来る主な要素と事前に特定しN個であると決めることが出来たとしよう。

    その能力を単純にc1,c2,c3…cNと定義出来たとしよう。

    それではN個の要素がそれぞれにリンクを大なり小なり結ぶとしよう。3つが関わる場合、2つが関わる場合様々あると考えるとNC2+NC3+…という小規模ネットワークがあり、それぞれが機能する確率をp1,p2….

    ああ、もう無理だ。モデル化なんて考えられるはずもない。このように(?)、企業の実態たるネットワークというのは事前に計算不能というのが厄介な問題なのだ。

    「新規事業が成功する確率」的な概念は結果からは計算出来る。すなわち試行回数を定め、成功数たるものを定めれば機械的には一応計算出来る。ただほとんど意味のない数値だ。

    学生が解くケース問題のように「この確率を上げるためには試行回数を減らすか、成功数を上げればよいことが分かります」という愚かな結論しか導かない。(試行回数を減らせば学習が不足し、成功数も減る、という効果も現れるので実に無意味な数字だ)。

    いやいや、それでは当てずっぽうしかないのか?「戦略策定」たるものに意味はないのか?となるとそうでもない。

    事業創出実務としてのネットワーク形成

    最初から要素数が多いと失敗する。

    要素の発見と能力の把握には金も時間もかかる。それぞれを結節出来るか検証し、トライすることにも金と時間がかかる。

    つまり極めて重要なノードを限定し、そのノード間の結節に注力をしなければならない。

    結節にトライすることにはコストがかかるため、難しいと思ったなら即座に方針を切り替えることが出来なければネットワークを形成することは出来ない。

    1つ1つの結節に「検討し、数を重ね検証し、議論を重ね…」という方針をとっていたのではネットワーク形成へのトライは最初から破綻している。

    計算不能な巨大ネットワーク形成というタスクに挑むにあたって議論・論理的思考・計算はあまりにも使い物にならない。現実に起きていることをありのままに直観し即断即決を連続しなくてはならない。

    即断即決をするためには判断基準が明瞭である必要がある。これは「戦略目標に寄与するか否か」だけにする必要がある。

    「これをしたらあの人が気分を害するかもしれない」「自分が野蛮な人間と思われるかもしれない」というノイズが介入すると失敗に導かれていく。

    無意識的に多正面作戦を展開しているからだ。特に「いい人だと思われたい作戦」と「事業を成功させたい作戦」の相性は最悪だ。せいぜいどちらかに絞るべきだ。

    上で書いた概念を図示すると以下のようになる。

    特に事業初期はノード数を絞る、結節を試みるリンクも絞る。複数のノードを結節させ、戦略目標達成が微弱でもよいので前に進んでいる状況を作る。

    長期一貫性が基本的な競争力

    このネットワークは複雑で巨大であるほど模倣可能性は低くなるので競争力は増していく。

    個々人の社員は「巨大ネットワーク構築」という超不確実な問題に挑むのではなく、主には既に形成されたリンクの保持強化に取り組めばよいので不確実性が下がる。

    リーダーも限定された小規模ネットワーク構築に挑めばよい。

    これを長期継続していれば強いネットワークになっていく。一方で「戦略目標」「極めて重要なノード(大切な真実)」がずれるとネットワークの組み直しをしなくてはならなくなり、大規模ネットワークの形成には失敗する。

    「戦略目標」「極めて重要なノード(大切な真実)」を変えず巨大なネットワークを作り続けるというのが企業が競争力を強化していく基本的な方針となる。

    撤退のとき・

    よく「新規事業の撤退はどう判断しているのか」と聞かれる。私にとっては結構シンプルである。

    1.戦略目標に価値がないことが判明した(とある価値を提供しようとしたが、客はそれには金を払わないことが分かった)

    2.「大切な真実」が真実でないことが分かった

    3.ネットワークを組み上げるコストが創造を遥かに上回り、他にもっと効率がよいものが見つかった

    過去経験ではほとんどが3番目の「他にもっと効率がよいものが見つかった」である。1と2でコケるならばあまりにセンスがない。特に1でコケるのはあまりに酷い失敗だ。ほとんどは顧客との対話を行っておらず社内議論だけに逃げていることに起因する。無償POCを続け、厳しい問いに向き合うのを先延ばしにしている。

    要はコケるのが怖くて先延ばしにしたことによる失敗である。

    企業が崩れるとき

    ちなみに新規事業のみならず「企業が崩れるとき」は「ネットワークの寿命が尽きたとき」である。

    ユートピア論には「ネットワーク(要はビジネスモデルや中核技術)が変わっても顧客価値に忠実であればよい」という主張もあるが、これは無理だろう。

    顧客価値、例えば「食品を冷やしたい」「移動を楽にしたい」に忠実であれば企業が繁栄出来るならば何故我々は元馬車業者の自動車会社や元氷屋の冷蔵庫メーカーを見ていないのだろう。

    大きな変革を乗り切るドラマチックな企業ストーリーは稀には見られるが稀である。世界的に有名な事例は稀だからこそ有名なのだ。

    企業の本体は戦略目標ではなく、ネットワーク側である。戦略目標に忠実にネットワークを組み直せばよいではないか、というのは幻想であろう。

    戦略屋は不確実性にどう向き合う

    上でくどくど話したように、戦略は巨大・複雑なネットワーク形成に挑むということである。

    戦略屋が難しい問題に「難しいですね」と言っても意味がない。

    戦略屋に求められるのは主に以下だと思っている

    • 意味のある戦略目標を明示し、一貫性を貫く
    • 自社アセット(ノード)を活用し形成出来る独自ネットワークの絵姿を示す
    • その中でも急所である「大切な真実ノード」を見出す。
    • 初期段階は不確実性を減らしながら小規模ネットワークの形成を進める
    • 長期一貫性を貫き巨大ネットワークを形成していく

    このセットが出来ない戦略屋はほとんど意味を持てないだろう。

    今私は「初期段階は不確実性を減らしながら小規模ネットワークの形成を進める」をやっていることが多くなってきた。直観を研ぎ澄まし、この問題に挑んでいきたい。

  • 研修・トレーニングにできること

    思えば研修を既に40社以上に提供してきた。その中で多くの気付きを得ながら、サービスの改善をしてきた。本稿では私(中村陽二)がどのような研修を提供することが出来るか、何故取り組んでいるのかを説明していきたい。

    研修で取り扱うテーマ

    当初は研修を提供しようという考えはなかったのだが、幸いにして多くの相談を頂くようになり取り組みは拡大していった。

    当初は新規事業創出やコンサルタントのスキルトレーニングなど短期の取り組みが多かったが、徐々に数ヶ月に渡るプログラムの設計・提供についても相談が増え始めていった。

    現在は基本的には事業創出・成長を担えるリーダーの育成に取り組んでいる。

    新規事業創出のプログラム例:事前学習・事後フォローアップ・2日間ワークショップ

    単発の講演を除いては企業の状況に合わせてプログラムを設計し、提供している。

    例えば数多く取り組んだものでは2日間のワークショップを中心とした研修がある。

    これは次世代のリーダー層とされる40歳前後の社員らに提供したものである。

    まず事前学習として、テキスト提供及びレクチャー動画の提供を行った。

    事前学習材料はその企業の歴史、向かいたい方向性、今までの事業成功・失敗経緯を踏まえカスタムメイドされたものである。テキストだとかなり長文になってしまったため、ポイントを短時間で説明した動画も合わせて提供した。

    事前学習はテキストを読むのみならず、各々に事業プランを練ってきてもらった。それを2日間のワークショップで一気に磨き上げていくというものである。

    2日のワークショップは凡そ以下のようなプログラムで提供した。

    Day1

    1. 事業コンセプトの再設計
    2. 高速調査
    3. 論点の抽出
    4. 高速調査
    5. ショートインタビューの実施(研修メンバー間でのインタビュー)
    6. 事業コンセプトの確定

    Day2

    1. インサイトの再整理
    2. 高速調査
    3. 収益性計算
    4. 市場規模算出
    5. 事業案のプレゼン化

    これは私が「サーキット型のトレーニング」という形式で提供している。

    つまり以下を1セットとして、これを繰り返して進めていく方法である。

    1. ワークの説明(10分)
    2. ワークの実施(30-40分)
    3. 発表(1-2分の発表を複数人)
    4. 講評(10分)

    実際にやってみると相当のスピードを求められるのでとにかく忙しい感覚になると思う。しかし、時間を限定していかないとすぐに調査というのは情報の海に溺れてしまう。

    論点を特定し、必要な情報を特定し方針を意思決定し続けるというサイクルには慣れる必要がある。

    事業戦略の立案というのは分からないことだらけである。ただリーダーならば少なくとも「何が分かれば、現在分からないことが分かるのか」という問いには答えることが出来なければならない。

    不確実性の中でのリーダーシップも一部磨くことが出来るだろう。データも十分にあり、合意形成がしやすいならばそもそもリーダーなんというものは必要がない。

    常にデータも時間も資源も不足している中でもどうするかを決断しなければならないからリーダーというものが必要なのだ。

    また1分で端的に結果を発表するというものよい経験だ。時間が限定されていれば必要な情報を端的に述べなければならない。通常の業務でこの能力を磨く場面は限られていることも多い。

    ただ相手が重要人物であればあるほど、話しを聞いてもらえる時間というのは貴重だ。そういう人物はなおさらにダラダラと話されることを嫌う。ストレートにポイントを述べることには慣れる必要がある。

    研修で重要だと考えていること

    忙しい日常業務から半強制的に遮断され、研修に数日間割り当ててもらうわけなので十分な意義を感じてもらわなければならない。

    私自身も「勉強になりました・知識のインプットになりました」程度のものは提供したいと思わない。

    もっとその数日間でタフな体験をし、参加前後では考え方自体に大きな影響を及ぼすものでなくてはならない。「事業創出のフレームワーク」的なものの他社事例を聞いただけでは、そのようなインパクトは出せない。これはまさしく、本で読めばよいのである(むしろそうあるべきですらある)。

    参加者自身がビジネスプランを能動的に考案し、不十分な情報から意思決定を行い続け、チームを率いるような体験をしなくてはならない。そしてそのプランを自信を持って発表し、経営陣を含む他人を動かすような体験をする必要がある。

    そして何よりこの過程を楽しい・未知のチャレンジとして楽しんでもらいたい。

    研修で提供する内容は毎月のようにアップデートを続けているので相談頂く時期により提供内容は進化していると思う。何かを文章化したり、発表したりすれば、新たな疑問が湧き上がり必然的にアップデートを続けていくことになる。

    〇〇プログラムという内容を固定化したものには現状しておらず、カスタムメイドの過程でプログラムを進化させている状況だ。

    共に素晴らしいトレーニングを作り上げていきたいと思う。

    講演で重要だと考えていること

    さて、講演について少し説明しよう。講演については以前より

    「何故わざわざコストをかけて直接講演が必要なのだろう?これは同じような内容を文章で伝えるのとは違うのか?」

    「特にコロナ禍ではウェビナーというものが多かった。これではリアルの迫力もない。何故わざわざタイミングを同期させて動画視聴に近い体験をする必然性があるのか?」

    という疑問を持っていた。

    私の中ではこれは決着しておりライブで音楽を聞くのと、音源(ストリーミング等)から聞くのとの違いと解釈している。例え同じ曲だったとしてもこれは別の体験だ。

    演者(ここでは私)、観客(参加者)、場・状況が作り出すユニークな何かがリアルにはある。これが講演の価値だと認識している。

    そうすると私としては話す内容がその場・状況・参加者に合っていることは勿論のこと、グルーヴ・バイブ・空気感も含めた演出・話し方に力を入れなければならないということだ。

    研修って意味ある?

    基本的には能力は実務を通じて作り上げたものがほとんどだろう。

    これはスポーツでも同様だ。研修というのは例えばテニスを始めるならば定期的に「一段上に上がるための集中トレーニング」に参加するようなものだ。

    一段上に行くには自分だけでがむしゃらになりながら努力するよりもコーチに定期的には見てもらって上に押し上げてもらった方が効果的である、ということには異論はないだろう。

    研修・トレーニングの存在は自分でがむしゃらに努力することを一切否定するものではなく、むしろ補完として機能する位置づけである。

    多くの能力は実務を通じて培われる。その補完、次に行くきっかけを与えるのが研修というものではないだろうか。

    問い合わせ

    研修、講演に関するお問い合わせは以下メールアドレスよりご連絡下さい。コラボレーションも歓迎です。

    nakamura@yojinakamura.com

  • 社外取締役・顧問に出来ること

    2025年9月からは株式会社fusicの社外取締役を務めている。

    その他にもアドバイザリー、顧問依頼は多くあり、月1回お話するという関与の仕方は数多く経験してきた。私から積極的に提案してきた、というよりほぼ全てが相談・依頼があり、それが起点になっている。

    以下は一部であるが公開されている事例である。

    fusic 社外取締役

    カソク顧問

    defimans顧問

    ご相談頂く度に「月1回で何が出来るだろう」と悩んできた。現在もそうであるが、基本的に私はビジネスを前に動かす側の立場であるので外部の立場から「こうした方がいいですよ」という関与ではない。

    上場会社の常勤取締役であった時代から、社外取締役というものの明確な役割を掴み取れないでいた。

    自分がその立場になるならば常勤の方々からそうは思われてはいられない!明確な貢献をしたい!と常に考えている。ここでは「限定的な時間しか使わない人が如何に価値を発揮出来るのか」を考え、自分の行動指針として行きたい。

    *もし、ありがたいことに私(中村陽二)にそのような相談を検討されている場合、本稿をお読み頂き私の関わり方というものを想像頂けますと幸いです

    社外取締役・顧問・アドバイザーに出来ること

    過去経験から、「これは有用であった」と思うことは主に以下である。

    1. 情報の提供
    2. ネットワークの提供(紹介)
    3. 議論整理及び意思決定の後押し
    4. 新たな視点の提供
    5. 長期一貫性を保ってもらう

    分かりやすい順から並べている。それぞれ以下に説明していく。

    情報の提供

    これは分かりやすいだろう。仕事柄、とにかく多くの情報に触れる。情報というのはマクロデータというわけではなく、要は

    「誰に、何が、いくらで、何故売れているのか。現場でどう有用である/ないのか。今後どうなるのか」

    という情報である。

    これはデスクトップリサーチの公開情報で到達はほぼ出来ない。言わずもがな公開情報というのは要は宣伝だ。実態よりも8-9割で語られるのがデスクトップリサーチというものである。

    実際の情報は人づてで聞くしかないというものだが、これはコストがかかる。時間もかかる。

    慣れていない人がインタビュー・ヒアリングをしようとしてもとにかくコストばかりかかる。

    例えば慣れていないとヒアリングを5名に実施するだけでも手配から2週間もかかるなんてこともある。

    それであれば1人情報を集積しており、その会社の情報もよく知っている人が生き字引的に情報を提供し議論を組み立てた方がよほどコストも安く結論に到達しやすい、というものである。

    当然ながらこれは私の専門分野だけでしか活きないのだが、これに関しては分かりやすい価値だと思う。

    とある、費用の使い方には厳しい目線を持った部門長の方からフィードバックを頂いたことがあった。

    「アドバイザリーというのは正直かなり疑っていたが、あなたの場合、事業の相談をしたらすぐに事例を引用して方針を導出するね。これは金を取れると思ったよ」(払っているのはその部門長自身なのだが)という意見を頂いた。

    やはり分かりやすい価値ということだろう。

    デスクトップリサーチやインタビューに情報取得を頼っている、実態の情報は自分らが事業を行っている領域でしか分からないということであればここはお役に立てる。

    私自身もこういったアドバイザーのことは「水先案内人」と呼び、積極的に起用している。むしろ門外漢の領域に案内人もつけずに歩き回ろうなんて思わない。

    ネットワークの提供(紹介)

    これも分かりやすい。顧客やパートナーを紹介するということである。

    勿論「とりあえずつなぎます」では脳がないので「こういう風に組めばお互いよいでしょう、皆さんどうですか」とパートナーシップのプランを作ってから紹介し、うまく着地するようにファシリテートをする。

    私は俗に言う紹介屋ではないので「月N件アポを組みますよ」とかはやらないのだが、実際の所はこれだけで十分な「費用対効果」を出せることが多い。

    日本国内のみならず、私が有する欧州・北米のパートナーらとつなぐことも多い。クライアント同士をつなぐことも珍しくない。

    注意をしているのは「双方にとって良い話しを持っていく」ことである。良い話しでないならば、もう私からの話しは聞いてくれなくなってしまうだろう。「中村が持ってくる話しはそれなりに効く価値がある」という状態を保ち続け、拡大していくことは勿論必要だ。

    この背景から紹介屋はやらないが、良いパートナーシップのコーディネートは積極的に進めている。

    議論整理及び意思決定の後押し

    意思決定者を集め、情報を集積し60-120分の会議・ワークショップを使って難しい議論に答えを出し合意形成を図っていくというのはそれなりに得意だ。

    最近では「コンサルティング」というスタイルよりも「ワークショップ」という意思決定スタイルの方がうまく機能すると感じることも多い。

    むしろ伝統的な意味での「コンサルティング」というのはあまりやっていない。

    スコープを定めて、論点を定めて、情報を集め、パワポにして、定期的に方針提案をし、フィードバックを受け…最終的に最終報告にまとめあげプレゼン、というのが伝統的なコンサルティングというヤツだ。

    どうしても意思決定者自身が意思を練り上げているというより、コンサルが提案し、それを聞いて意見を言う、というリズムになりがちである。実行者自身らの意思・思考が練上がっている感じがしない。

    ワークショップでは私はファシリテーターと情報提供屋に徹する、という立場になる。方針を作る・意思決定をするのは当事者らである。

    意思決定というのはそれなりにタフであるため、ファシリテーターが適切なタイミングで適切な問いを問いかけた方が前に進みやすい。

    この役割はよく担っている。このワークショップを通じて意思決定を適切なタイミングですることが出来、合意形成も図れるならば費用対効果は見込める、と考えて頂いているのだろう。

    ちなみにだが、私はストレートに言うと「壁打ち」という役割は好まない。壁を打つ程度であれば対人(私)ではなく対AIの方が優れている。そうして練上がった考えと情報を揃えて意思決定の場をファシリテートした方が私自身の時間の使い方としては効果的だろう。

    新たな視点の提供

    組織や個人にはそれぞれの「世界の見方」というものが存在する。組織の中に浸っているとそれが唯一の見方のように感じられてしまう。

    しかし、そのようなことは勿論ない。世界の見方は相対的なものである。

    外部の立場から見ると「なんでそんな重要ではないことにこだわっているのか」「もう可能性がないことが分かっている事業もまた検討している?」などと感じることも多い。

    自分らが注力している内容が注力する価値があるのか、どう知ることが出来るだろう。

    これは内部に使っている立場から自分らを相対化して見るのは難しい。

    私も例外ではなく、数年毎に立場が変わる度に「あのときはなんであんなことに悩んでいたのだろう」という経験をしている。

    適切な距離感を持ちつつも、その会社・個人を理解している人というのは必要ではないか。

    ただしこの「新たな視点」だけのためにアドバイザリー依頼というのもやや抽象的な印象を受ける。これはあくまで付随的だろう。

    長期一貫性を保ってもらう

    私はビジネス成功の秘訣は「目標に対して長期一貫して忠実である」ことだと考えている。

    よほどおかしな目標を掲げない限り、教科書的に動いていけば相応に成功出来る。

    そうとなれば当たり前の質問をし続け、長期一貫性を保ってもらう守護者として振る舞うことは価値があるだろう。当たり前の質問はシンプルだ。

    「あなたが少なくとも2年曲げない目標は何だ」

    「そのために必要なことは何だ」

    「それに集中して取り組んでいるか(その他の活動をしていないか)」

    「取り組んだ結果、何が分かったか、どう軌道修正しているか」

    これに毎日クリアに答えられればよい。私も毎回これを問う。

    そうすると自然と長期一貫性を保つことが出来る。

    やらないこと

    何等かの相談をされて、ただの感想を述べる・ランダムに思いついた質問をするだけで価値を出せる超人ではないのでこのスタイルはやらない(やれない、というのが正しいか)。

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    上記をお読み頂き、何等か一緒にやれそうであれば以下までご連絡下さい。

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    中村陽二です。

    フロントエンドはAstro, CMSはwordpressで実装しています。

    本サイトでは私の考えの発信や趣味で行っている開発(AI、金融関係が多い)についての情報を発信します。